2025年はまだ4月半ばにも関わらず、すでに数々の驚きが報じられてきた。しかし、今回のニュースは多くの人にとって予想外だろう。アマゾン創業者で億万長者のジェフ・ベゾス氏が、なんと電動ピックアップトラックの開発に資金を提供しているというのだ。それも、価格がわずか2万5000ドルの2人乗りEVピックアップという、これまでにない大胆なプロジェクトである。
このプロジェクトを推進しているのは、「Slate Auto(スレート・オート)」というこれまで全く知られていなかった謎のスタートアップだ。その存在が明らかになったのは、テクノロジーメディア「TechCrunch」による報道からだった。
Slate Autoの詳細は依然としてベールに包まれている。同社の公式ウェブサイトにアクセスしても、黒一色の画面に情報請求用のフォームがあるだけで、車両のスケッチやコンセプト、写真などは一切公開されていない。
TechCrunchによると、Slate Autoは2022年に設立され、マサチューセッツ州フラミンガムを拠点とする「Re:Build Manufacturing(リビルド・マニュファクチャリング)」と関係があるという。このRe:Buildは、製造業の再構築を掲げる企業であり、ベゾス氏が支援するベンチャーでもある。新興企業に対して製造支援を行うインキュベーター的な存在で、Slate AutoはこのRe:Build内部の「Re:Car」というプロジェクトから誕生したとされている。
Slate Autoの本社はミシガン州トロイにあり、設立以来ひっそりと活動を続けてきた。同時に、カリフォルニア州ロサンゼルスにも拠点を構えている。秘密主義の中にあっても、TechCrunchはSlate Autoがフォード、ゼネラルモーターズ(GM)、ハーレーダビッドソン、ステランティスといった大手自動車メーカーから数百人規模の人材を採用していることを突き止めている。
Slate Autoはベゾス氏だけでなく、複数の著名投資家からも出資を受けている。ロサンゼルス・ドジャースの筆頭オーナーであり、投資会社グッゲンハイム・パートナーズのCEOであるマーク・ウォルター氏も出資者の一人だ。また、Re:Buildの主要投資家であるトーマス・タル氏もこのプロジェクトに関与しており、両者ともにSlate Autoの取締役を務めている。
これまでにSlate Autoは、少なくとも1億1100万ドルの資金調達を完了しており、さらに別のラウンドでも資金を集めている。ベゾス氏が具体的にいくら出資したのかは明らかにされていないが、彼のファミリーオフィス「Bezos Expeditions」を運営するメリンダ・ルイソン氏がSlate Autoの取締役に名を連ねていることが、州および連邦の登記書類から判明している。
EV市場が過熱する中、Slate Autoが開発するこの低価格電動ピックアップが、今後の自動車業界にどのようなインパクトを与えるのか、大いに注目が集まっている。現時点ではその姿はまだ明かされていないが、Slate Autoの動向から目が離せない。